インタビュー

パトリシア・パニー 篇

パニーさんを囲んで。

パニーさんのご厚意で、私たちとしてはたいへん幸運で光栄なことに、コンサートの後オーナーである桂とスタッフ数人で、パニーさんを囲んでお話を聴く機会を得ることとなりました。

パトリシア・パニーさんのプロフィールはコチラ 

彼女は例えば今回のリサイタルでも演奏されましたスカルラッティやシューベルトなど情感豊かな作曲家を特に好んで演奏されるそうです。
がしかし、ショパンは可能な限り避けていらっしゃるとか。日本人はショパン好きな人が多いらしく、 ショパンを弾くことをしばしばリクエストされるそうです。わたしはショパンがキライとまるで子供のように ストレートに申しましたところ、『あなたは珍しい日本人ですね。』と。

話を元に戻しまして、確かに、―私個人の感想を述べることが許されるならば、彼女の響きはそういった情感豊かな作曲家の作品を弾くために生まれてこられた方のそれように感じられてなりません。
がしかしそれは同時に"情感豊か"というだけに留まらず、もっと何か心の深淵の―集合無意識と言っていいのかあるいは、宇宙の普遍的な層から生まれ出でているような、それほど人々の魂をゆさぶる程の力強く、でいて優しく包み込むような性質を帯びているように感じられてならないのです。

そのような中、あえてJ.S・バッハについて聴いてみましたところ(個人的に好きな作曲家であることと、"情感豊か"であることからかけ離れていると私には思われたので)、『確かに彼は情感豊かというのとは違いますね。バッハの音楽は構造的でありますが、詩的でもあります。にもかかわらず、現代の演奏家、特に鍵盤奏者はまるで機械か何かのようなスタイルで演奏します。』と動作を交えて。あえて誰かは申しませんがとちゃめっけたっぷりに付け加えられました。
言われてみればそのとうりだなと合点がいきました。続けて、(J.S・バッハの時代の鍵盤楽器である)ハープシコードの響きは好きですかと尋ねたところ、『はい、大好きです。モダンピアノでバッハを弾く時はハープシコードを意識します。』と。さすがは大学で教鞭をとっていらっしゃるだけあって、説明がとてもクリアで理論だっていて、なおかつわかりやすいというのが、お話の全体を通して見ても、そういった印象を持ちます。
でいて堅苦しさはなく、親しみやすい、リラックスした雰囲気を放ってもいらっしゃいます。

続きまして、師事されたマリア・ジョアン・ピレシュ氏について、どんな影響を受けられたかについて。
『私は、彼女の教えを受けたのはとても若い時で、16歳でした。彼女に会うまではとても堅苦しいスタイルで弾いていました。しかし彼女の教えを受けて、マインドが解放され、自由になりました。』とのことです。
楽譜・作曲家の意図とのバランスって難しいのでしょうか。素人には計り知れないことです!

次々にどん欲に質問を繰り出すのわけですが、プライベートのことについて。つまりお子さんたちについて、あなたが日本に来られる時淋しがられたでしょうねとお聞きしたところ、上の12歳になる男の子は、『マミー、バーイ。』と淡々とした手を振ってお見送りされたのだとか。彼はたぶんシャイだから淋しくないふりをしただけしょう?と申しましたところ、『たぶんそうでしょうね。』とさも愛おしそうに、母親の表情になられて。『でも私は家では警察のように厳しく取り締まってますからね!』とフランス風オチも忘れずに。そして下の女の子は、涙を流されながら淋しがっておられたそうです。

それにしても、12歳のお子さんをお持ちとは思えな程に若々しくいらっしゃいます!お姿も、お心持ちも!
ちなみにホールに到着された時は、フランス人であることの期待を裏切らないハイセンスで今時のシャツとデニムといういでたちでいらっしゃいました(ステレオタイプな見方でしょうか)。
その上、ご理解のあるパートナーを持たれてお幸せです。家庭と仕事の両立の秘訣ですね。きっと。

最後に、彼女はフランス語、イタリア語、英語、ドイツ語を自在に操られるとのことで、夢は何語で見ますかと尋ねましたところ、天井方向を仰ぎ見られながら、『ああ…、夢自体あまり憶えてはいないのですが、イタリア語かフランス語でしょうか…。ドイツ語は成長してから習った言葉なので。』

文責:岡本
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